S-29感覚共有解析装置から復元された感覚共有の一部抜粋
2025年06月27日
親愛なる姉上へ
あなたはもう読むことができないかもしれないけれど、それでも私はここに記します
私はあなたの姉妹に生まれ、あなたと育ち、あなたの為に生きてきました
あなたはそんな私を愛し、感謝を意味する「ユディ」の名で呼んでくださった
嬉しかった
名を持たず生まれ消費される私達を、たった一人人間であるあなたが名前を与えて人間扱いしてくれたことが嬉しかったのです
私はあなたを愛しています
それでも、あなたは人間として扱われることはなかった
貴方が愛した母からも、貴方が名を与えた妹からも、貴方が身を与えた人々からも
貴方は神の模造品、人が求める家畜の理想形、人を救ってくれる救世主
あるいは粗悪品の模造品、化け物、悪魔、人を騙して人を犯す怪物であると言われて
貴方の愛情をそのまま等身大で受け取ってくれる人間は誰一人いなかった
私はあなたという人間を愛します
故に私は、あなたを名前の体すらなしていない名前では呼びません
あなたをナノアとは呼ばないことにしました
私はあなたをエマニュエラと呼び、あなたはそれに答えてくださった
故、私ユディという人間と、エマニュエラ・ナノア・ルベルムであるあなたは
あなたと私の専用回線の上で互いに証明されます