Senet and Mehen
「お前は私の子。今日、私がお前を生んだ。」
脊椎動物は遥か昔の時代、二頭の竜によっておおよそ3種の存在へと分けられた。
動物、人獣、獣人。
その中にホモ・サピエンス(知恵のある人間)と呼ばれる動物がいた。
彼らは深い知恵を持ち、文明を発展させる能力を持った動物だった。
人獣、獣人の成り立ちにも彼らが関わっているほどだ。
しかし、サピエンスは長年の獣人差別の反動による逆差別により数を減らし、
また同時に獣人と人獣を混同している者たち、動物を食べるのは良くないという動きにより
食糧難にも陥っていた。
そんな中、“白金の国”シーラのとある動物研究/保護団体の科学者が発表したそれは
サピエンス、獣人、人獣、動物、全ての種族の救いとなりえる物だった。
どんな人類にも移植できる臓器を持ち、どんな人類にも輸血できる血液を持ち、
どんな病気も治せる細胞を持ち、どんな怪我も治せる再生力を持ちながら
食用としても美味しく食べられる正体不明の存在だ。
人は喜んだ。
もう病気に苦しむ必要も、食糧難にあえぐこともない。
これはサピエンスに対する神からの福音である、と。
「Sirenia-Stella Type29」と呼ばれたそれの正体に気づきすらせず。
Sirenia-Stella Type29
サピエンス、獣人、人獣のどの人種にも移植できる臓器、どの人種の誰にでも輸血でき、摂取した者の病や怪我を癒す力のある血液を持つ人工生物。
通称「S-29」「S肉」と呼ばれ、肉は市場でも非常に安価で流通している。
全ての個体がオリジナル個体のクローンであり、またほとんどの個体はオリジナルと「感覚共有」を通じて記憶や感覚、知恵を共有している。
基本的に姿を現さないか、サピエンスに近い姿へと擬態して現れる。
全ての個体は大なり小なり「姉上」「姉君」と呼ぶ存在を認識し、崇拝する傾向がある以外は大人しく優しい性格をしている。
そのため労働力や子供の遊び相手としても重宝されている。
“私はお母さんが好き。お母さんが望むなら、全て我慢できる。”